やりたいこと

その19
小学生の息子に「将来,何になりたいか,何をやりたいか」を聞いてもなにも答えが返ってこない。職業ではなく,こんな人でもよかったが,繰り返し聞いても目をそらす。育ての方針の一つは,「自ら考え、自ら行動できる知恵と勇気を持った人間になる」である。親から子供へ小さい時から問いかけることで,自分の進むべき道をうっすらでも考えるかと思ったが難しそうだ。今の子供たちの生活では,どうしたいかを考える前に先生や親からにやることを与えられる。こうしたいという意思を持つためには,日常の中で少しずつ「考える場面」を積み重ねることが必要かもしれない。
情熱大陸」という番組で「よみたん自然小学校」の紹介があった。場所は沖縄県読谷村。3歳から5歳までの幼児の学校。カリキュラムはなくその日やることは,こども自身で決める。ルールも自分できめる。大人は見守るだけ。代表の小倉宏樹氏は「子供たちのいきいきとすごしてくれたらそれでいい。」と。子供が日常の中で考え行動する訓練として,素晴しい試みかもしれない。
自分に対し,「何がやりたいか」を考えても問いかけても,はっきりと浮かんでこない。日々やるべきことは,やりきれないほど多くあるが,「心の底から自分のやりたいことはこれだ」というものはない。職業ではなく「やりたいこと」となると大人は考えてないかもしれない。
心の底から何かをやりたいという意識はどのように湧き出てくるのか。人類の祖先についてのテレビ番組の中で「人間とは一言でいうと」と言う質問に対する人類学の先生の答えはこうだった。
「人間とは過去と未来を考える動物である。」
篠田謙一氏(国立科学博物館人類研究部 研究主幹)サイエンスゼロ より
やりたいことは,過去,現在,未来へ繋がる流れを理解,予測し,自分の立ち位置を考え続ける中で湧き出てくるのではないかと思った。自分が未来のためにどうありたいかをイメージできたときであろう。簡単ではない。考え続けないと湧き出てこない。
「生きるというのは,考えるということである。」キケロ