現実社会の経験から,子供達に伝えたいこと。

その42 
 入社当時,尊敬する先輩から「仕事のことだけに専念していれば会社が生活を保障してくれる。心配しなくても,うちの会社にいれば人並みの生活はできる。」という言葉を心の奥でうっすら信じてきた。次にあるような甘ったれた感覚をひきずってきたと思う。
・・・たとえば、僕らの世代、1980年代前半に大学を卒業した人たちは、ほとんどの人が「大学院を出て日本の大企業に勤めれば、かなりおもしろおかしく好きなことをやって、自分の生涯を終えることができるんじゃないか」という、非常に甘ったれた考え方を持っていました・・・梅田望夫氏「自分の力と時代の力」講演録(JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009年3月21日)より
 一流大学の大学院卒,博士課程終了のエリートが周囲にいるが,学歴だけでは思いどおりとはいかないようだ。確かに彼らは頭脳明晰で論理的,処理能力も高い。しかし現実の社会では正しい論理が常に理解され評価されるわけではない。泥臭い駆け引きや,心理的な戦いを強いられる。会議では声が大きい,発言が多いというだけで勝負が決まることもある。仕事の出来でなく,人間的になめられると押し込まれ,不遇な目にあう。
 子供の頃にこんな現実を教えてくれる人はいなかったし,世間一般でもエリートは素晴しい人生を送っていると思い込んでいるだろう。子供の教育に熱心な親は,いい学校を出て,大企業に入社することで全てが手に入ると信じ込んでいるだろう。
 目指すものが結果的に一流大学,大企業である場合もあると思う。しかし,それで終わりではない。そこからが本当の勝負の始まりである。大学での知識が仕事に直結するわけではない。自分のスペシャリティを高めるという観点から,本当の意味で「勉強する」ということを続ける。しっかりした人間力を持ち,常に自分を磨き続ける。「成長し続けなければならない」という感覚をもてるかどうかで人生は決まる。

「子供にはすべてのもっとも大きな可能性がある。」トルストイ