勉強への動機づけ

その43
 子供に対する教育の目的は,「知識を身につける」「人間的に成長する」の二つがある。「知識を身につける」ことのみが大きく注目されるが,両方のバランスが大事である。
 子供が勉強をやろうと思うかどうかは,将来自分が参加する社会をどう感じるかによると思う。身近に接する大人である親や先生に憧れるのが理想であろう。テレビでみるプロ野球選手,サッカー選手,歌手でもよい。自分にとってのヒーロー・ヒロインを見つけて欲しい。
 自分が子供の頃を振り返ってみると,小学校6年生の時にY先生という勉強熱心で厳しい先生が担任だった。その先生は「人間的に成長する」という面を懸命に教えてくれた。クラスの中で1人でも非道徳的なこと(いじめや他人に迷惑をかける)をすると,連帯責任で全員がその非を理解し反省するまで家に帰して貰えなかった。われわれがその非を理解しない時には涙を流し訴えた。そんな情熱的な面と,寸暇をおしんで常に読書をし,ありとあらゆる方面に精通する知性的な面を兼ね備えていた。授業の中でもいろいろな本の内容を紹介してくれたが,大人になってからその意味の深さに感銘することがたびたびあった。今考えると無意識のうちにその先生に憧れを抱いていたと思う。
 子供が自然に良い人に憧れを持つ。その人に少しでも近づきたいと思う。近づくためにはどうしたらよいか。今何をするべきかを考える。それは,勉強ではないかもしれない。しかし,自分を高めようと何かに努力をする。そんな気持ちが子供の中から自発的に生まれてきて欲しいと思う。
 子供に対し「勉強しろ」というよりも,親である自分自身が生き生きとした人生を送っている姿を見せ続けたい。そのことが子供にとって勉強しようと思う気持ちに繋がると信じる。